事に反対したるものなり。予が今日の問題に於ける一己の位地より見れば、冷眼看過すべきものにして、更めて喋々論弁するの必要なし。予は常議員に選ばるとの通知を得たるも、昨年以来一回も本部に出でたることなし。促がされたるも、本部の依頼は一切峻拒して之に応ぜざりき。是れ予が意を政界に絶ちたるが故に非ず、また社会を度外に置くが為に非ず。予が良心の指導する処は、進歩党の誤れる方針、特に本部諸君の方針と反対なるが為にして、予は初より政府と提携するの不可なるを確信したり云々」
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 政党が「政権」と云ふものを中心にして進退する時代には、先生のやうに主義政見で動くと云ふ人は、一個の邪魔物だ。三十一年十二月の議会で、先生が財政意見で憲政本党と相容れず、遂に全く党界を脱して、一個独立の島田三郎になられた時「政友諸君に告ぐ」と題して発表された文章には、次のやうに書いてある。
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「予は遂に憲政本党を脱し、議会に於ては独立の議員となれり。近時不幸、政友諸氏と意見を異にして歩武を共にするを能はず、故を以て党中の要局に当りて責任の位地に立つことを固辞したり。人或は予に党外に退
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