地にはアベコベに「此処日本人入るべからず」と云ふ立札をさへするやうになつた。
島田先生は最初からの条約励行主唱者であつた。条約改正の出来ないのは、外国人がかく事実上内地雑居の自由と利便とを享有しながら、日本の法律に服従しないと言ふ特権を持つて居るからだ。故に条約改正を速成する為めには、居留地制を励行して、現条約の不便を実感させねばならぬと云ふので、この事は既に二十二年の著作「条約改正論」に書いてある。
二十六年の衆議院に出た「現行条約励行建議案」にはかう書いてある。
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「衆議院は、政府が現行条約の実施上我帝国の権利を汚損する所あるを認む。故に衆議院は切に政府に望む、政府が条約の権利を明確にしてこれを励行せられんことを。敢て建議す。」
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先生もこの建議案賛成の一人だ。然れ共この一つの建議案の内容には黒白氷炭相容れざる思想と感情とが流れて居る。
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一、内地雑居主義の自由派――島田先生等。
一、非内地雑居主義の国権派即ち攘夷派。
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現にこの建議案の説明者たる阿[#「阿」に「
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