るに至ては、豈に酸鼻の極に非ずや。
故に地方官吏の直に彼等人民に接する者は、深く之に同情を表せざるべからず。然れ共試みに来りて彼等吏員と会談せよ、余は其の必ず彼等の冷淡なる口気に驚くべきを信ずるなり。
彼等吏員の多くは被害民の哀訴歎願を以て、一個虚偽の行為と解釈するが如し。只だ二三|使嗾者《しそうしや》の非行に過ぎざる者と解釈する多きが如し。而して二三の狡児が鉱毒運動を名として費用を徴集するに過ぎずとする者多きが如し。然れ共是れ正に大誤解なると同時に、此の大誤解は遂に鉱毒地人民を指して、直ちに一個の暴民団体と解了する者を出ださんとするなり。
連合上京と言へることが兇徒聚集に値するや、将た今回彼等人民の行為が触法なりや否やは余が元より言ふべき所に非ず。余は既に前掲の事実に依りて、彼等人民の解散後に処したる警官の非行を知れり。而して余は偶※[#二の字点、1−2−22]《たま/\》之に依りて、彼等警官が平素如何に鉱毒地民を誤解し居るかを証明し得たりと信ずるなり。アヽ此の最下級官吏の誤解は上伝せられて、やがて中央政府の解釈となるなり。余は上下不通の禍機てふ者が斯かる間に伏在することを憂ふるなり
前へ
次へ
全13ページ中11ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
木下 尚江 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング