お前の手などに拾はれたものかと、前世の罪業が思ひやられますのでネ」
「何だ」といきまく養母の面《おもて》、ジロリ横目に花吉は見やりつ「ハイ、乞食の母《おや》の懐《ふところ》で、其時泣き死《じに》に死んだなら、芸妓《げいしや》などになり下《さが》つて、此様《こんな》生耻《いきはぢ》曝《さら》さなくとも済んだでせうにねエ」唇|噛《か》み〆《し》めて、ツと面《かほ》を背向《そむ》けぬ、
「ナニ、芸妓になり下つたト、――余《あん》まりフザけた口きくもんぢやない、乞食の女《こ》でも宮様だの、大臣さんだのの席へ出られると思ふのか」
「大臣が何だネ、養母《おつか》さん、お前は大臣なんてものが、其様《そんな》に難有《ありがたい》のかネ、――私《わたし》に取つちや一生忘られない仇敵《かたき》なんだよ――、あゝ、思うても慄《ぞつ》とする、三月の十五日、私の為めの何たる厄日であつたのか」
「三月十五日が、何《どう》したと云ふんだ」
「お前が私《わたし》を拾つて下すつたのは、今から二十年前の師走《しはす》の廿五日、雪のチラつく夕間暮《ゆふまぐれ》と能《よ》くお言ひだが、たツた五年の昔、三月十五日の花の夜、十六
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