電話ぢや能《よ》く解らないツてんで態々《わざ/\》使者《ひと》まで来たぢやないか、何が面白くて湖月などにグヅついてたんだ、帰つたと思《お》もや、頭痛がするツて寝て仕舞つてサ、昨日も今日も御飯もたべず、頭が痛えか、腰が痛えか知らないが、一体まア、何《どう》思つて居るんだ」
去《さ》れど花吉は答へんともせず、
ポンと、お六は灰吹叩きつ「花吉ツ、耳が無《ね》いのか、お前《めえ》の目にや、私《わたし》と云ふものが何と見えるんだ、――何処《どこ》の者とも知れねエ乞食女の行倒《ゆきだふれ》の側に、ヒイ/\泣いてる生れたばかりの女の児が、余《あんま》り可哀さうだつたから拾ひ上げて、乳の世話から糞尿《おしめ》の世話、一人前に仕上げる迄、何程《どれほど》の苦労だつたとも知れたもんぢやない、チヨツ、新橋の花吉が一人で出来たとでも思ふのか、オイ花吉、此の生命《いのち》は誰のお蔭《かげ》だよ」煙管《きせる》取り上げて、花吉の横顔、熱き雁首《がんくび》にて突ツつきぬ、
花吉は瞑目《めいもく》して頭《かしら》を垂れぬ「其の御講釈なら、養母《おつか》さん、最早《もう》承はるに及びません、何の因果《いんぐわ》で
前へ
次へ
全296ページ中99ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
木下 尚江 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング