余ある所、好個の外務大臣とも言ふべかりける、「時に」と、河鰭《かはひれ》は真赤に酔うたる顔突き出し「是《ぜ》ツ非《ひ》、花ちやんに御依頼の件があるのだが」とサヽやくを、
「身に協《かな》ふことならば」と、花吉の芝居懸《しばゐがか》りに行く、
「否《い》や、戯謔《じやうだん》ぢやない、今度は真面目《まじめ》の話だ――ソレ、彼《あ》の向ふに北海道土人の阿房払《あはうばらひ》宜しくと云ふ怪物《けだもの》が居るだらう、サウ/\、あの丸井の禿顱《はげ》と話してる、――彼奴《あいつ》誠に人情を解せん石部党で、我々同業間の面汚《つらよごし》のだ、其処《そこ》で今夜|彼奴《きやつ》の来たのを幸《さいはひ》に、我党の人にして遣《や》らうと思ふんだ」
「河鰭さんの我党などにはならない方が可《よ》う御座んすよ」
「オイ/\飛んだことを言ふ――デ、彼奴《きやつ》に一杯、酒を飲ませて遣《やら》うと思ふんだが、我々の手では駄目だから、是《こゝ》に於《おい》てか花吉大明神の御裾にお縋《すが》り申すのだ」
 妙案々々、賛成々々など何《いづ》れも叫ぶ、
「人がましくも、殿方が頭《つむり》を下げての御依頼《おんたのみ》と
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