》ねるもあり、腕を撫《ぶ》して高論するもの、妓《ぎ》を擁して喃語《なんご》するもの、彼方《かなた》に調子外れの浄瑠璃《じやうるり》に合はして、絃《いと》をあやつる老妓あれば、此方《こなた》にどたばた逐《お》ひまくられて、キヤツと玉切《たまぎ》る雛妓《すうぎ》あり、玉山|崩《くづ》れて酒煙|濛々《もう/\》、誠に是《こ》れ朝《あした》に筆を呵《か》して天下の大勢を論じ去る布衣《ふい》宰相諸公が、夕《ゆふべ》の脚本体なりける、
 一隅に割拠《かつきよ》したる五六の猛士、今を盛りの鯨飲《げいいん》放言、
「だが、君、今夜の最大奇観とも謂《いひ》つべきは、篠田長二の出て来たことだ、幹事の野郎も随分《ずいぶん》人が悪いよ、餅月と夏本の両ハイカラの真中《まんなか》へ、彼《あ》の筒袖《つゝツぽ》を安置したなどは」
「所が当人、其を侮辱とも何とも感じないのだから恐れ入るんだ」
「人間も彼程《あれほど》に常識《コンモンセンス》を失へば気楽なものサ」
「見給へ、彼奴《きやつ》未だ四角張つて何か言つてるぜ」
「ヤ、相手が珍報社の丸井隠居ぢや、是《これ》こそ天然《てんねん》の滑稽《こつけい》ぢや」
 折柄、ツ
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