離れて、水兵は繩梯《はしご》から落ちて逆巻《さかま》く濤《なみ》へ行衛《ゆくゑ》知れずになる、艦隊の方からは劇《はげ》しく苦情を持ち込む、本来ならば、彼時《あのとき》山木にしろ、君にしろ、首の在《あ》る筈《はず》が無いのぢやないか」
「御尤《ごもつとも》至極《しごく》、であればこそ、松島大明神と斯《か》く随喜渇仰致すでは御《お》わせんか――ドウしたのか、花吉、ベラ棒に手間が取れる」
 今は大洞受け太刀となつて、シドロモドロの折こそあれ、襖《ふすま》スウと開《あ》いて顔を見せしは、――女将《ぢよしやう》のお才「どうも松島さん、御気の毒様ですことねエ、是《これ》も流行妓《はやりつこ》を情婦《いろ》にした刑罰《むくい》ですヨ、――待つ身のつらさが御解《おわかり》になりましたでせう、ホヽヽヽヽヽ」

     九の一

 松島海軍大佐をして愛妓花吉を待つに堪へざらしめたる湖月亭の宴会とは、何某《なにがし》と言へる雑誌記者の、欧米漫遊を壮《さかん》にする同業知人等の送別会なりけり、
 五ツの座敷ブチ抜きたる大筵席《だいえんせき》は既に入り乱れて盃盤《はいばん》狼藉《らうぜき》、歌ふもあれば跳《は
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