にも其覚悟があるんだ」
 大洞は始めて安心したるものの如く、両手に頭撫で廻はしつゝカンラ/\と大笑せり、
「何が可笑《をか》しいツ」盃《コップ》取りなほして松島は打ちも掛からんずる勢、
「戯謔《じやうだん》仰つしやツちや、因まりますゼ、松島さん、貴下《あなた》、其様《そんな》馬鹿気たこと、何処から聞いておいでになりました」
「今日も省内《やくしよ》の若漢《わかもの》等が、雑談中に切《しき》りと其事を言ひ囃《はや》して居つた」
「ハヽヽヽイヤ何《ど》うも驚きました、成程、さすが明智の松島大佐も、恋故なれば心も闇《やみ》と云ふ次第《わけ》で御《ご》わすかな、松島さん、シツカリ御頼《おたのみ》申しますよ、相手が兎《と》に角《かく》露西亜《ロシヤ》ですゼ、日清戦争とは少こし呼吸が違ひますゼ」
 大洞は小盃《ちよく》を松島に差しつ「私《わし》も篠田と云ふ奴を二三度見たことがありますが、顔色容体|全然《まるで》壮士ぢや御《お》ワせんか、仮令《たとひ》山木の娘が物数寄《ものずき》でも、彼様男《あんなもの》へ嫁《ゆか》うとは言ひませんよ、よし、娘が嫁うとした所で松島さん、山木も未《ま》だ社会党を婿《む
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