薄で、感情の脆弱《ぜいじやく》なものだからナ、少こし気概でもあつて、貧乏して居る独身者でも見ると、直《ぢ》きに同情を寄せるんだ、実にクダらんものだからナ」
「では、菱川君の如きは、差向き天下第一の色男と云ふ寸法のだネ」と行徳は槍を入れぬ、
「ハヽヽハヽヽヽ」と流石《さすが》の菱川も頭を掻《か》けり、
「然《し》かし、篠田君、山木の梅子と言ふのはナカ/\の関秀《けいしう》ださうだネ」と談話の新緒《しんちよ》を開きしは家庭新誌の主幹阪井俊雄なり「文章などナカ/\立派なものだ」
「左様《さやう》、余程意思の強い女性《ひと》らしいです――何でも亡母《おつかさん》が偉かつたと云ふことだから」と篠田は言ふ、
「では母の遺伝だナ、山木の様な奴には不思議だと思つたのだ」
「否《い》や、左様《さう》ばかりも言へないでせう、現に高等学校に居る剛一と云ふ長男《むすこ》の如きも、数々《しば/\》拙宅《うち》へ参りますが、実に有望の好青年です、父親《おや》の不義に慚愧《ざんき》する反撥力《はんぱつりよく》が非常に熾《さかん》で、自己の職分と父の贖罪《しよくざい》と二重の義務を負《お》んでるのだからと懺悔《ざんげ
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