》つて来る様になれば〆《し》めたものだ、虚無党でも社会党でも其の恐ろしいのは、中心に婦人が居るからだ、日本でもポツ/\其の機運が見えて来た」
「婦人と云へば、篠田君」と行徳は体《たい》を転じて「僕はネ、君が永阪教会を放逐されたと聞いて、ホツと安心したのだ」
 菱川は大きなる鼻に皺《しわ》よせて笑ひつ「無神無霊魂の仲間が一人殖えたと云ふわけか」
 一座|復《ふたゝ》び哄笑《こうせう》、
 行徳も、微笑を洩《も》らしつ「君等は直ぐ左様《さう》云ふからこまる――今迄篠田君の身辺《まはり》には一抹《いちまつ》の妖雲《えううん》が懸《かゝ》つて居たのだ、篠田君自身は無論知らなかつたであらうが――現に何時《いつ》であつたか、労働協会の松本君の如きも、篠田君は山木剛造の総領娘と結婚するさうぢやないか、怪《け》しからんことだと云ふから、君達は未《ま》だ其れ程までに篠田君が解からないのかと冷笑《ひやか》してやつたのだ」
 一座の視線、篠田の面上に注がれたり、
「ハア、左様《さう》いふことがあるんですかなア」と篠田は首を傾けぬ、
「なアに」と菱川は口を開きつ「婦人《をんな》なんてものは、極《ご》く思想の浅
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