り、只だ錦衣玉食《きんいぎよくしよく》するに過ぎず、
露西亜が議会を有せんこと、余り遠き将来に非《あらざ》るべし、諸君を羨《うらや》むの間も、蓋《けだ》し暫時ならんか、
狂犬をして血に吼《ほ》えしめよ、
去れど我等は兄弟なり、
[#ここで字下げ終わり]
渡部は椅子に復せり、拍手は起れり、
「けれど普通選挙を得ざる我等と露西亜と、何の相違がある」と行徳はツブやきぬ、
七の三
「最早《もう》、虚無党の御世話になる必要は無いよ、クルップの男色を発《あば》いてやれば、忽《たちま》ち頓死《とんし》するし、伊大利大蔵大臣の収賄《しうわい》を素破抜《すつぱぬ》いてやれば直《ただち》に自殺するしサ、爆裂弾よりも筆の方が余ツ程力があるよ、僕は彼奴等《きやつら》の案外道義心の豊かなのに近来ヒドく敬服して居るのだ」揶揄《やゆ》一番、全顔を口にして呵々大笑《かゝたいせう》するものは、虚無党首領クロパトキン自伝の愛読者|菱川硬次郎《ひしかはかうじらう》なり、其の頓才に満座|俄《にはか》に和楽の快感を催《もよ》ほせり、彼は炭を投じて煖炉の燃え立つ色を見やりつゝ「何の運動でも、婦人が這入《はひ
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