と見做《みな》しつゝあり、思ふに日本国民の多数も亦《ま》た露西亜を以て暴熊視《ばういうし》しつゝあらん、諸君、アヽ、我等は何等の多幸多福ぞや、独り此間《このあひだ》に立ちて曾《かつ》て同胞の情感を傷害せらるゝことなきなり、啻《ただ》に是《こ》れのみならず、彼等の嫉妬《しつと》、憎悪《ぞうを》、奪掠《だつりやく》、殺傷の不義非道に煩悶《はんもん》苦悩するを観《み》て、愈々《いよ/\》現在立国の基本社会組織の根底に疑ふべからざるの誤謬《ごびう》あることを正確に証明せり、
 欧米列国は日本に党《くみ》せん、去れど独逸《ドイツ》は露西亜《ロシヤ》の友邦なるべしとは、殆《ほとん》ど世界の各所に於て信ぜらるゝ所なり、然《しか》れ共《ども》諸君よ、我等は此際分析を要するに非《あら》ずや、敢《あへ》て問ふ、謂《い》ふ所の独逸《ドイツ》とは則《すなわ》ち何ぞや、彼等は軽忽《けいこつ》にも独逸皇帝を指して独逸と云ふものの如し、気の毒なる哉《かな》独逸皇帝よ、汝は今夏《こんか》の総選挙に於て全力を挙げて戦闘せり、曰《いは》く社会党は祖国に取つて不倶戴天《ふぐたいてん》の仇敵なり、一挙にして之れを全滅せざるべ
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