艦《ふね》造《つく》るの、戦争《いくさ》するのツて、税は増す物は高くなる、食ふの食へねエので毎日苦んで居るんだが、桂《かつら》大臣の邸など見りや、裏の土手へ石垣を積むので、まるで御城の様な大普請《おほふしん》だ」
「今日も新聞で見りや、媽《かゝあ》の正月の頸《くび》の飾に五千円とか六千円とか掛けるのだとよ、ヘン、自分の媽の首せエ見てりや下民《しものもの》の首が回《ま》はらなくても可《い》いと言ふのか、ベラ棒め」
「何《いづ》れ一と騒動なくば収まるめエかなア」
銀座街頭の大時計、眠《ね》む気に響く、
「オ、もう十二時だ、長話しちまつた」
「でも未《ま》だ平民社の二階にや燈火《あかり》が見えるぜ――少こし小降になつた様だ、オヽ、寒い/\」
七の二
平民週報社の楼上を夜深《よふ》けて洩るゝ燈火《ともしび》は取り急ぐ編輯《へんしふ》の為めなるにや、否、燈火の見ゆるは編輯室にはあらで、編輯室に隣れる社会主義倶楽部の談話室なり、
燈下、卓上《テーブル》を囲むで椅子《いす》に掛かれる会員の六七名、
直に目に映《うつ》るは鬚髯《しゆぜん》蓬々《ぼう/\》たる筒袖の篠田長二なり「で
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