ネ、ほんとにお顔向けも出来ないので御座いますよオホヽヽヽ」
「アラ、奥様《おくさん》勿体ないこと、奥様の信仰の堅くて在《い》らつしやいますことは、良人《やど》が毎々《つねづね》御噂申上げるので御座いましてネ、お前などはホンとに意気地《いくぢ》が無くて可《い》けないツて、貴女、其の度《たんび》に御小言《おこごと》を頂戴致しましてネ、家庭の能《よ》く治まつて、良人《をつと》に不平を抱《いだ》かせず、子女《こども》を立派に教育するのが主婦たるものの名誉だから、兎《と》ても及びも着かぬことではあるが、チと山木の奥様《おくさん》を見傚《みなら》ふ様にツて言はれるんですよ、御一家《ごいつけ》皆《みん》な信者で在《い》らつしやいまして、慈善事業と言へば御関係なさらぬはなく、ほんたうにクリスチヤンの理想の家庭と言へば山木様のやうなんでせう、――ねエ皆さん」
一同シナを作つて「ほんたうに長谷川の奥様《おくさん》の仰つしやいます通りで御座いますよ、オホヽヽヽヽヽヽ」
驚《おどろい》て、更に視線を転ずれば、太き松の根方に設けたる葭簀《よしず》の蔭に、しきりに此方《こなた》を見ては私語しつゝある五六の婦人
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