《なんぢ》の聖旨《みむね》を地に成さしめ給へ、篠田は歩《ほ》を転じて表の方《かた》に出でぬ、
雪を蹴つて来るものあり「先生――お早う御座います」言ひつゝ彼は、一葉の新聞を篠田の手に捧ぐ、
「オヽ、村井君ですか、御困難ですネ」と、篠田は新聞受け取りつゝ、「何か昨夜あつたと見えますネ、少し遅れた様ですが」
「ハ、夜中に長い電報が参りましたので、印刷が大層遅くなりました――先生、到頭《たうとう》戦争を為《す》るのでせうか――」
「サア、左様《さう》なりませうネ」
「何卒《どうぞ》、先生、主義の為めに御奮闘を願ひます」慇懃《いんぎん》に腰を屈《かが》めたる少年村井は、小脇の革嚢《かばん》緊《しか》と抱へて、又た新雪《あらゆき》踏んで駆け行けり、
中学の校帽|凛々《りゝ》しく戴ける後姿見送りたる篠田は、やがて眸子《ひとみ》を昨日|己《おの》が造れる新紙の上に懐《なつ》かしげに転じて「労働者の位地と責任」と題せる論文に一《ひ》とわたり目を走らせつ、心は今しも村井が告げたる二面の夜中電報に急げり、
「日露外交の断絶」テフ一項の記事と相並《あひならん》で、篠田の眼を射りたるものは、「九州炭山坑夫同
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