加へつ「梅子さん――此れは未《いま》だ曾《かつ》て一点の汚《けがれ》だも見ざる純潔の心です、今ま始めて貴嬢《あなた》の手に捧げます」
 梅子は左手《ゆんで》を加へて篠田の右手《めて》を抱きつ、一語も無くて身を其上に投げぬ、
 風も寝《い》ね雪も眠りて夜は只だ森々《しん/\》たり、
 既にして梅子は涙の顔を擡《もた》げぬ「篠田さんお叱りを受けますかは存じませぬが、暫時《しばし》御身《おんみ》を潜めて下ださることはかなひませぬか、――別段御耻辱と申すことでも御座いませんでせう――犬に真珠をお投げなさらずとも――」
 篠田は首打ち掉《ふ》りつ「如何《いか》なる場合に身を棄つべきかは、我等が浅慮の判別し得る所ではありませぬ」
「篠田さん、最早《もう》決して弱き心は持ちませぬ」と梅子も今は心|決《き》めつ「何時と云ふ限《かぎり》も御座いませぬから、是れでお別れ致します、只今の御一言を私の生命《いのち》に致しまして――で、御一身上、私が承つて置きまして宜しいことが御座いまするならば、何卒《どうぞ》仰しやつて下ださいませんか――」
 篠田は暫《し》ばし首傾けつ「では、梅子さん、一人御紹介致しますから
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