、是《こ》れが単一なる物質的問題とは何事です、富資《とみ》が年々増殖して貧民が歳々増加する、是れ程重大なる不道徳の現象がありますか、御覧なさい、今日の生活の原則は一に掠奪《りやくだつ》です、個人は個人を掠奪して居る、国は国を掠奪して居る、刑法が言ふ所の窃盗《せつたう》、彼は児戯《じぎ》です、神の見給ふ窃盗とは則《すなは》ち、今日の社会が尤《もつと》も尊敬して居る法律と愛国心です、所有権の神聖、兵役の義務、足れ皆な窃盗掠奪の符調に過ぎないのです、而《し》かも是れが為めに尤も悩んで居るものは、梅子さん、実に女性《によしやう》でありますよ、社会主義とは何ですか、一言《いちごん》に掩《おほ》へば神の御心です、基督《キリスト》が道破し給へる神の御心です」
彼は机上の一冊を右手《めて》に捧げつ「何卒、梅子さん、呉々《くれ/″\》も是《これ》の御研究をお忘れないことを望みます、人生の奥義《あうぎ》は此の些《さゝや》かなる新約書の中に溢《あふ》れて、汲《く》めども尽くることは無いでありませう、――アヽ、梅子さん、何卒《どうぞ》我国に於《お》ける、社会主義の母《マザア》となつて下ださい、母《マザア》と
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