います――」梅子は畳に伏せり、歔欷《きよき》の音《ね》、時に微《かすか》に聞ゆ、
 梅子は面《おもて》を擡《もた》げぬ「――定めて厚顔《あつがましき》ものと御蔑《おさげす》みも御座いませうが、篠田さん、――私如きものが、貴所《あなた》を御慕ひ申すと言ふことが、貴所の御高徳を毀《きずつ》けることになりまするのは能《よ》く存じて居りまするから、只《た》だ心の底の秘密として、曾《かつ》て一語半句も洩らした覚《おぼえ》のありませぬことは、神様が御承知下ださいます――其れを、結婚の申込を悉《ことごと》く謝絶致します所から、人を疑つて喜ぶ世間は種々《いろ/\》の風評を立てまして――貴所《あなた》の御名誉に関係致しまする様な記事を、数々《しば/\》新聞の上などでも読みまする毎に、何程自分で自分を叱り、陰ながら貴所に御詫《おわび》致したで御座いませう――けれど我が心に尋て見ますれば、他《ひと》の伝説を、全く虚妄《きよばう》とのみ言ひ消すことが出来ませぬので、必竟《ひつきやう》、貴所に此の最後の――縲絏《るゐせつ》の耻辱を御懸《おか》け申すのも、私の弱き心からで御座います」
 梅子は袖《そで》を噛《か》
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