み締めて声立てじと怺《こら》へぬ、
「何も仰《おつ》しやつて下ださいますな」と篠田は目を閉ぢつ「現社会の基礎に斧《をの》を置きつゝある私共が、其の反撃に逢《あ》ふのは、毫《すこし》も怪むに足らぬことで御座います」
「けれど、篠田さん、貴所《あなた》は今ま御自愛なさらねばならぬ御体で御座いませう」梅子の一語には満身の力《ちから》溢《あふ》れて聞こえぬ、
「自愛致すとは」と、篠田は訝《いぶか》る、
「此儘《このまゝ》篠田さん」と梅子は却《かへつ》て怪みつ「貴所《あなた》は入獄なさるので御座いますか」
「左様《さう》です、力を以て来るものには、只だ温順を以て応接する外無いでせう」
「けれど――従来《これまで》、愚父《ちゝ》などの話に依りますれば、貴所《あなた》のやうな方は、監獄内で不測の災禍にお罹《かゝ》りなさる恐があると申すでは御座いませんか、出過ぎたことでは御座いますが、暫《しばら》く日本を遠のきなさいましては――外国には随分他国に身を逃れると云ふ例《ためし》もあるやうで御座いますから」
「梅子さん、御厚誼《ごかうぎ》は謝する所を知りません、けれど私の一身には一人探偵が附けてあるのです、
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