ぬ「山木|様《さん》、何時、先生を拘引すると申すのです」
「――明朝――」
「明朝――」とばかり大和は殆《ほとん》ど色を失ひしが「そして、何《いづ》れから御聴き込みになつたので御座います――甚《はなは》だ差出がましう御座いますが――」
 梅子は悄然《せうぜん》頭《かうべ》を垂れぬ、
「――何《どう》ぞ、篠田さん、御赦《おゆるし》下ださいまし――警視庁から愚父《ちゝ》へ内密の報知がありましたのを、図《はか》らず耳にしたので御座います、お耻《はず》しいことで御座いますが、愚父《ちゝ》などからも内々警察へ依頼致したのに、相違無いので御座います――篠田さん、――私は貴所《あなた》の前に一切を懺悔《ざんげ》致さねばならぬことが御座いますので、御軽蔑《ごけいべつ》をも顧《かへり》みず罷《まか》り出でましたので御座いますが――」
 畳に両手|支《つ》きたるまゝ、声は震《ふる》へて口籠《くちごも》りぬ、
 大和は窃《そ》と立ちて室《しつ》を出でぬ、不安の胸に腕《うで》拱《こまね》きつゝ、
「梅子さん、快して御心配なさるには及びませぬ」と、篠田は微笑せり「我々の頭上に絶えず政府の警戒が厳酷なので、何時何
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