ました凶事でも御聞き込みになりましたので――」
「ハイ」と、僅《わづか》に梅子は首肯《うなづ》きぬ、
大和は拳《こぶし》を固めぬ、
「如何《いか》なる件でありまするか、御遠慮なく仰《お》つしやつて下ださい」篠田は火箸《ひばし》もて灰かきならしつゝあり、
「篠田さん」と、梅子は涙|呑《の》み込みつ「是れは貴郎《あなた》の少しも御関係ないことです、けれど今の世の中は、貴郎を――拘引《こういん》する奸策を廻らして居るのです、冷かな手は黒き繩もて貴郎の背後《うしろ》に迫つて居りますよ――」
梅子は涙輝く眸《ひとみ》を揚《あ》げて、始めて篠田を凝視せり、
「やツ」と、思はず声を放つて、大和は膝を進めぬ、
「はゝア――イヤ左様《さう》したこともありませう」と篠田は聊《いさゝ》か怪しむ色さへに見えず、雨戸打つ雪の音又た劇《はげ》し、
堪《た》へずやありけん、大和は口を開きぬ「先生――御心当りがお有りなさるのですか」
「否《い》や、別に心当《こゝろあたり》も無いが、災厄《わざはひ》と云ふものは、皆な意外の所より来るのだから」
大和は復《ま》た沈黙せしが、やがて梅子の方《かた》に膝《ひざ》を向け
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