せぬでした」と、篠田も丁重《ていちよう》に礼を返へして、「此の吹雪《ふぶき》の深夜|御光来《おいで》下ださるとは甚《はなはだ》だ心懸《こゝろがかり》に存じます、早速承るで御座いませう」
梅子は僅《わづか》に頭《かしら》を擡《もた》げぬ「――篠田さん――私、貴所《あなた》に御逢《おあ》ひ致しまする面目が無いので御座いますけれど――今晩容易ならぬことを、耳に致しましたものですから――」
彼女《かれ》は逡巡《ためら》ひつゝ、窃《そつ》と傍《かたへ》の大和を見やりぬ、
容易ならぬことの一語に、危殆《きたい》の念|愈々《いよ/\》高まれる大和は、躊躇《ちうちよ》する梅子の様子に、必定《ひつぢやう》何等の秘密あらんと覚りつ、篠田を一瞥《いちべつ》して起たんとす、
篠田は制しぬ「何事か知りませぬが、梅子さん、少しも御懸念《ごけねん》に及びませぬ、是《こ》れは私の弟ですから」
大和は又た座りてホと吐息を漏らしぬ、
「否《い》エ、篠田さん、大和さんに御遠慮申したのでは御座いませぬが」、梅子は言はんと欲して言ひ能《あた》はざるものの如し、
「何でありまするか」と篠田は問ひぬ「何か私の一身に関係し
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