りがに伝達しつ、又た姉の悲哀の容態をば尾鰭《をひれ》を付けて父母に披露す、芳子は流石《さすが》にお加女《かめ》夫人の愛児なり、梅子の苦悶《くもん》を見て自ら喜び、姉を讒訴《ざんそ》して、母を喜ばしむ、只《た》だ前《ぜん》よりも一層真心を籠《こ》めて彼女《かれ》を慰め、彼女を奨《はげ》まし、唯一の楯《たて》となりて彼女を保護するものは剛一なりける、
 剛一は千葉地方へ遠足に赴《おもむ》きて二三日、顔を見せざるなり、雨|蕭々《せう/\》として孤影|蓼々《れう/\》、梅子は燈下、思ひに悩んで夜の深《ふ》け行くをも知らざるなり、
「アヽ、剛さんは如何《どう》なすつたでせう、今夜《こよひ》はお帰りの日取なんだが、今頃までお帰りないのは、大方《おほかた》此の雨でお泊りのでせう、お一人なら雨や雪に頓着《とんちやく》なさる男《ひと》ぢやないけれど、お友達と御一所《ごいつしよ》では、左様《さう》もならないからネ」
 彼女《かれ》は机上の置時計を見て独語せり、
「ほんたうに剛さん、私や、貴郎《あなた》に感謝してますよ、貴郎の様な男らしい男を弟《おとゝ》と呼ばせ給ふ神様は、何と云ふ恩恵《めぐみ》深くて居らつ
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