うに/\と、篠田を避けて居るんだ」
 川地は大口開いてカラ/\と笑ひつ「吾妻、貴様もエライ善根《ぜんこん》があるんだナ、感心だよ」
「仮令《たとひ》斯様《かやう》になつても、未《ま》だ人間には相違無いからネ」と、吾妻は首肯《うなづ》き「然《し》かし、もう斯うなるからは、何卒《どうぞ》篠田に面《かほ》を見られない様にして貰ひたいのだが、其の論文にしても、何《どう》も不敬罪とは覚束《おぼつか》ないからナ、裁判は警視庁や内務省が為《す》るんで無いからナ――何程《どんなに》牽強付会をした所で、官吏侮辱位のものだ、二月か三月の重禁錮《ぢゆうきんこ》だ、――僕ア外国へ逃げでもしなけりや、安心が出来ませんよ」
「非常な心配だナ」と、川地は冷笑しつゝ、「其れなら我輩も一ツ善根の為めに、貴様を救《たす》けて篠田を一生|娑婆《しやば》の風に当てないやうにして遣《や》らう」
「笑談《ぜうだん》言つちやいけませんよ、何程《なんぼ》意気地の無い裁判官でも、警視庁の命令に従ひはしませんからネ」
「馬鹿だなア」と川地はポカリ煙草を喫《きつ》しつ、「裁判官は只だ法廷で、裁判するだけの仕事ぢや無《ない》か――法律なんて
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