はず》が無い、何かあるに相違無い、政府の方針は飽《あ》く迄《まで》も社会党撲滅と云ふことであるから、若《も》し其に好都合な申告を為《し》ないと、今度は警察の無能と云ふんで、我々の飯の食ひ上げになる、だから何でも可《い》いから持つて来い、虚誕《うそ》を組立てて事実を織り出すのが探偵の手腕だと――」
「馬鹿ツ」
「馬鹿ぢやありません、今度も左様《さう》です、松島が負傷したに就て、軍隊や元老の方からも八釜《やかま》しく言うて来て困る、是非何とかして、篠田を引《ひ》ツ縛《くゝ》らねばならぬからと言ふんでせう――其りや成程、僕が最初篠田と山木の嬢《むすめ》と、不正な関係がある様に虚誕《うそ》を報告して置いた結果で仕方ないですが――」
 川地は再び大喝せり「馬鹿ツ」

     二十七の二

 吾妻のワナ/\と顫《ふる》へる面《かほ》を、川地課長は冷《ひやや》かに眺《なが》めて
「其の態《ざま》は何だ、吾妻、貴様も年の若いに似合はず役に立つ男と思つて居たが、案外の臆病だナ、其れでも警察の飯を食つて居るのか」
 吾妻は頭押へつゝ「――其《そり》や僕も、爺《おやぢ》の脛《すね》を食ひ荒して、斯様《こん
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