・ライト》で照らし渡る様に感じて、怖くて堪《たま》らない」
彼は瞑目《めいもく》して暫《し》ばし胸裡《きようり》の激動を制しつ「――ト云うて、貴官《あなた》の方へは、彼の罪迹《ざいせき》を何か報告せねばならぬでせう――イヤ、其様《さう》せねば貴官《あなた》の御機嫌《ごきげん》が悪いでせう――けれど実を言ふと、僕には彼の罪悪と云ふものを発見することが出来ないんですもの――」
川地の眼《まなこ》はキラリ輝けり「ぢや、吾妻、今日《こんにち》まで報告した彼奴《きやつ》の秘密は、虚事《うそ》だと云ふのか」
「――悉《ことごと》く虚報と云ふでもありませぬが――悉く真実と云ふ事も困難です――」
「ぢや、吾妻、彼奴《きやつ》が山木の嬢《むすめ》を誘惑して、其の特別財産を引き出す工夫してると云ふのは、ありや真実《ほんたう》か何《どう》だ」
「――あれは少し違つてる様でした――」
「花吉を妾にして居ると云ふのは」
「あれも――少し違つて居ります」
川地は忿怒《ふんぬ》の声荒々しく「九州炭山の同盟罷工|教唆《けうさ》も虚報と云ふのか」
「イヤ、全然《まるで》虚報と云《いふ》でもありませぬが――実は篠田
前へ
次へ
全296ページ中266ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
木下 尚江 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング