―篠田や社員の奴等に探偵と云ふことを感付かれりや為《し》なかろな」
「なアに、外の奴等は感付く所か、僕が余り篠田に接近すると云ふので、却《かへつ》て嫉妬《しつと》して居る程です、ですから僕の流言が案外社員間には成効して、陰では皆《みん》な充分に篠田を疑つて居るですがネ――」言ひ淀《よど》みたる吾妻は、側なる小卓に片肘《かたひぢ》を立てて、悩まし気に頭《かしら》を支《さゝ》へぬ、
「其れが何《どう》したと云ふのだ、篠田の方は何したと云ふのだ」
「――課長」吾妻の声は震《ふる》へり「川地さん、――然《し》かし篠田は覚《さと》つて居るらしいのです、慥《たしか》に覚つて居るらしいのです」
「けれど吾妻、覚つて居ながら、探偵を近《ちかづ》けて居る理由もなからう――特《こと》に彼云《あゝいふ》悪党が」
「所が、其れが大間違ひのです」と、吾妻は姿勢を正して吐息をつけり「川地さん、正直に言ふと、彼は偉い男ですよ、彼は慥《たしか》に僕を探偵と知つてるのです、其れで僕と差向《さしむかひ》の時には、必ず僕に説教するのです、彼は全然《まるで》坊主ですナ、其真実の言葉が、此の心の隅《すみ》から隅まで探燈《サアチ
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