《さう》です、間違ありませんよ」
「御苦労/\」と川地は首肯《うなづ》きつゝ己《おの》がポケットの底深く蔵《をさ》め「是《こ》れが在《あ》れば大丈夫だ、早速告発の手続に及ぶよ、実に不埒《ふらち》な奴だ、――が、彼奴《やつ》、何処か旅行したさうだが、逃《にげ》でもしたのぢや無《なか》らうナ」
 吾妻は微笑《ほゝゑ》みつ「なに、郷里へ一寸《ちよつと》帰つただけのです、今晩あたり多分|帰京《かへ》つた筈です、で、罪名は何とする御心算《おつもり》ですネ」
「左様《さう》さナ」と主人は頬|撫《な》でつゝ「先《ま》づ不敬罪あたりへ持つて行くのだ、吹つ掛けは成《な》るべく大きくないと不可《いかん》からナ」
「エ、不敬罪ですつて」と吾妻は声やゝ打ち顫《ふる》へり、
 主人は鋭き眼して睨《にら》みぬ「何だ」
「なに、何《どう》もしやしませぬがネ」と吾妻は心押し静めつ「何《ど》の道、大至急願ひたいものです――僕は最早《もう》篠田の面《かほ》を見るに堪へないですからネ」
 吾妻の額には恐怖の雲|懸《かゝ》る、
「何をビク/\するんだ」と、主人は吾妻を一睨《いちげい》せり「其様《そんな》ことで探偵が勤まるか―
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