らだ》なんですから、ちつとも関《かま》やしませぬけれど、其れぢや、先生に御気の毒ですものねエ」
「なアに、花ちやん」と、大和《おほわ》は番茶|呑《の》み干しつゝ、事も無げに笑ひて、「其様《そんな》ことは先生に取つて少しも珍らしく無いのだ、此頃は尚《ま》だ酷《ひど》い風評《うはさ》が立つてるんだ――山木の梅子さんて令嬢《かた》と、先生が結婚しなさるんだツて云ふんでネ、是れには先生も少こし迷惑して居なさる様なんだ、皆《みん》な先生を毀《きずつ》けようとする者の卑劣な策略なんだから、花ちやん、左様《さう》心配しなさるに及ばないよ」
「左様でせうか」
「けれど大和さん」と老母は顔差し出し「ツイ此頃も、其の山木のお嬢様とやらの弟御《おとゝご》さんが御来《おいで》になつたで御座んせう、チラと御聞きしただけですから能《よ》くは解りませんけれど、其の御姉《おあねえ》さんが何《どう》してもお嫁に行かないと仰しやるんで、トド、何か大変なことでも出来《しゆつたい》したと云ふ様な御話で御座んしたよ」
「ウム、彼《あ》の松島の一件か」と、大和は例の無頓着《むとんちやく》に言ひ捨てしが、忽《たちま》ち心着きてや両
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