ないんですか――」
「そんなに急ぐのかネ、花ちやん、たまのことだから、少しは遊んで行つても可《い》いでせう、外の処《とこ》ぢや無いもの」
黙つてお花は頭《かしら》を振り「明日の正午までには是非|帰館《かへ》らねばなりませんの」
ガラリ、格子戸《かうしど》鳴りて、大和は帰り来れり「やア、花ちやん、来《いら》つしやい、待つてたんだ、二三日、先生が御不在ので、寂しくて居た所なんだ」
「貴郎《あなた》までが、――そんナ――」とお花は泣きも出《い》でなんばかり、
二十五の二
晩餐を果てて、三人燈下に物語りつゝあり、「何だか、阿母《おつかさん》、先生が御不在と思《お》もや、其処《そこ》いらが寂しいのねエ」と、お花は、篠田の書斎の方《かた》顧《かへり》みつゝ、
「ほんとにねエ、在《いら》しつたからとて、是《こ》れと云ふ別段のことあるでも無いのだけれど」と、兼吉の老母も首肯《うなづ》きつ、
「本当に私、申訳ないと思ひますワ」と、お花は急に思ひ出したるらしく「先生が私を御世話なすつて下さるのを、世間では彼此《かれこれ》申すさうぢやありませんか、私ヤ、何《ど》うせ斯様《かう》した躯《か
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