》漲《みなぎ》れど、流石《さすが》に頭髪《かしら》は去年《こぞ》の春よりも又た一ときは白くなり増《まさ》りたり、
榾《ほだ》の煙は「自然の香」なり、篠田の心は陶然《たうぜん》として酔へり、「私よりも、伯母さん、貴女《あなた》こそ斯様《こんな》深夜《おそく》まで夜業《よなべ》なさいましては、お体に障《さは》りますよ」
「なんの、長二」と伯母は白き頭振りつ「身体《からだ》は使ふだけ健康《ぢやうぶ》だがの、お前などのは、心気《こゝろ》を痛めるので、大毒だよ――今ではお前も健康の様だが、生れが何せ、脆弱《よわ》い質《たち》で、五歳《いつゝ》六歳《むつ》になるまでと云ふもの、全《まる》で薬と御祈祷《ごきたう》で育てられた躯《からだ》だ――江戸の住居も最早《もう》お止めよ、江戸は塵《ちり》と埃《ごみ》の中だと云ふぢや無いか、其様《そんな》中に居る人間に、何《どう》せ満足《ろく》なものの在《あ》る筈《はず》は無い、今ま直ぐと云ふわけにもなるまいが、何卒《どうぞ》伯母の健康《たつしや》な中に左様《さう》しなさい、山姥《やまうば》金時《きんとき》で、猿や熊と遊んで暮らさうわ、――其れは左様《さう》と、
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