わらひ》傾けつ、框《かまち》に腰打ち掛けて雪に冰《こほ》れる草鞋《わらぢ》の紐《ひも》解かんとす、
「お前が来ると知つて居りや、湯も沢山《たくさん》、沸《わ》かして置いたのに」と伯母が炉上の茶釜《ちやがま》をせゝるを、「なに、伯母さん、雪路だから、足も奇麗《きれい》ですよ」と、篠田は早くも上りて炉辺に座りぬ、
 昔ながらの松明《まつのあかり》の覚束《おぼつか》なき光に見廻はせば、寡婦《やもめ》暮《ぐ》らしの何十年に屋根は漏り、壁は破れて、幼くて我《わが》引き取られたる頃に思ひ較《く》らぶれば、いたく頽廃《たいはい》の色をぞ示す、
「まア、長二、お前ほんとに吃驚《びつくり》させて、斯様《こんな》嬉しいことは無い」と、山の馳走《ちそう》は此れ一つのみなる榾《ほだ》堆《うづたか》きまで運び来れる伯母は、イソ/\として燃え上がる火影に凛然《りんぜん》たる姪《をひ》の面《かほ》ながめて「何時《いつ》も丈夫で結構だの、余り身体《からだ》使ひ過ぎて病気でも起りはせぬかと、私ヤ其ればかりが心配での」と言ひつゝ見遣《みや》る伯母の面《おもて》は、何時《いつ》もながら若々として、神々しきばかりの光沢《つや
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