拍手《はくしゆ》の間に響けり、満場既に酔《ゑ》ひぬ、
反対者の冷笑|熱罵《ねつば》もコヽを先途《せんど》と沸《わ》き上れり、「露探」「露探」「山木の婿の成りぞこね奴《め》」「花吉さんへ宜《よろ》しく願ひますよ」
彼は徐《おもむ》ろに口を開きぬ「諸君――」
此時、聴衆の頭上を飛ぶが如くに駈《か》け来れる一警部が、演壇に飛び上がつて、何事か警視に耳語《じご》せり、
瞥視は倉皇《さうくわう》、椅子を蹴つて起てり「解散――弁士――中止」
満場総立となれり、警官力を極《きは》めて制すれ共聴かばこそ、「革命」「革命」「革命」
良久《しばし》見てありし篠田は、右手を伸ばしぬ、
「静に」
群衆は舌を留めて篠田を見たり、
「火に油|注《そゝ》ぐ者の火傷《くわしやう》は、我等の微力に救ふことは出来ませぬ」
彼は一揖《いちいふ》して去れり、
満場再び湧き返へれり、玻璃窓《ガラスまど》の砕くる響|凄《すさ》まし、
二十四の一
中仙道《なかせんだう》熊谷《くまがや》を、午後の六時廿分に発したる上武鉄道の終列車は、七時廿六分に波久礼《はくれ》駅に着きぬ、
秩父《ちゝぶ》の雪の山
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