ち諸君は自家撞着《じかどうちやく》です」
「何故自家撞着だ――馬鹿、小僧、引ツ込め」と例の階上の左側より騒ぐ、
「主戦論者は其通り無礼背徳だ」と階下より見上げて応戦するもあり、
 弁士は額の汗|拭《ぬぐ》ひつ「看《み》給《たま》へ、露西亜《ロシヤ》帝国政府の無道擅制《ぶだうせんせい》は、露西亜国民の敵ではありませんか、然《さ》れ共《ども》独り露西亜政府のみでは無いです、各国政府の政策と雖《いへど》も、其の手段に露骨と陰険の相違はあるか知れませぬが、其の精神は皆な露西亜と同じ侵略主義ではありませぬか」
 喝采《かつさい》湧《わ》くが如くにして階上左側の妨害を埋没《まいぼつ》する刹那《せつな》、警視は起てり「弁士、中止」
「見ろやアイ」「民主々義万歳」など思ひ/\の叫喚《けうくわん》沸騰《ふつとう》して、悲憤の涙を掬《むす》びたる青年弁士の降壇を送れり、
 聴衆の少しく静まるを待つて、司会者の椅子《いす》を離れたる渡部伊蘇夫《わたべいそを》は、澄み渡る音声に次の弁士を紹介す「篠田長二君――演題は社会党の……」
 皆まで言はさず、喝采の声、堂を動かせり、篠田は既に演壇に立てり、
 絶叫の声は
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