りつすゐ》の地が無いのだ」「コラ、垣を越えては不可《いかん》」「圧《お》すな/\」「提灯《ちやうちん》が潰《つ》ぶれるワ」「痛い/\」「ヤア/\」
同じく入場し得ざる為め、少しく隔《へだ》たりて観居《みゐ》たる数名、
「日本も偉いことになつて参りましたナ、此の戦争熱の最中で、非戦論の演説を行《や》らうツてんですから」
「左様《さやう》、其れを又た聴きたいてんで、此の騒《さわぎ》なんですからナ」
「而《し》かも貴所《あなた》、十銭傍聴料を払ふんだから、驚くぢやありませんか」
「正直な所、誰でも戦争など有難いもんぢやありませんのサ、――大きな声ぢや言はれませんがネ」
二十三の二
立錐《りつすゐ》の地なしと門前の警官が、絶叫したるも宜《うべ》なりけり、左《さ》しもに広き青年会館の演説場も、只《た》だ人を以て埋めたるばかり、爛々《らん/\》たる電燈も呼吸の為めに曇りて見えぬ、一見、其異に驚くは警官の厳重に排置せられしことなり、
演壇の右側には一警視の剣を杖《つ》きて、弁士の横顔穴も穿《あ》けよと睨《にら》みつゝあり、三名の巡査は俯《ふ》して速記に忙殺《ばうさつ》せらる、
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