に倒れて、咽《むせ》び入りぬ、「――神様――何卒――お赦《ゆる》し下ださいまし――」
二十三の一
ハイ――と警《いまし》むる御者《ぎよしや》の掛声勇ましく、今しも一|輌《りやう》の馬車は、揚々として霞門《かすみもん》より日比谷公園へぞ入り来《きた》る、ドツかと反《そ》り返へりたる車上の主公は、年歯《ねんし》疾《と》くに六十を越えたれども、威風堂々として尚《な》ほ鞍《あん》に拠《よ》つて顧眄《こべん》するの勇を示す、三十余年以前は西国の一匹夫《いちひつぷ》、今は国家の元老として九重《こゝのへ》雲深き辺《あたり》にも、信任浅からぬ侯爵|何某《なにがし》の将軍なりとか、
陪乗したるは清洒《せいしや》なる当世風の年少紳士、木立の間に逍遙《せうえう》する一個の人影を認むるや指《ゆびさ》しつつ声をヒソめ「閣下、彼処《かしこ》を革命が歩るいて居りまする」
「ナニ、革命」侯爵は身を起して彼方《かなた》を睨《にら》みつ「あの筒袖着た壮士の様な男か」
「ハ、閣下、彼《あれ》が先刻も談柄《だんべい》に上りましたる、社会党の篠田と申す男《もの》で御座りまする」
「フム、松島の一眼を失つたのも
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