》全体の権利と安寧との為めに、必ず之を公にして、社会の制裁力を試験せねばなりません」
梅子の視線はお加女の面上に転ぜり「継母《はゝうへ》、貴女は嘸《さ》ぞ御不満足で御座いませう、貴女の女《こ》は、世にも恐ろしき流血の重罪を犯《をか》しました、けれど継母《はゝうへ》、貴女のお望の破操の大悪よりは、軽う御座いますよ――」
彼女《かれ》の眼光は電光の如く大洞の顔を射れり「処女の神聖を涜《け》がさん為めに準備せられた此の建物が、野獣の汚血《をけつ》に塗《まみ》れたのは、定めて浅念なことでせう――傷《きずつ》けるものの為めには医師を御招きなさい、けれど、犯罪者の為めに、何故《なぜ》早く警官をお呼びなさらぬ」
大洞は、色を失つて戦慄《せんりつ》するお加女の耳に近《ちかづ》きつ、「少《す》こし気を静めさして今夜の中に密《そつ》と帰へすが可《よ》からう――世間に洩れては大変だ」
* * *
ヒユウ/\と枝を鳴らせる寒風も、今は収まりて、電燈の光|寂《さび》しき芝山内《しばさんない》の真夜中を山木剛造の玄関には、何処《いづく》にか行かんとすらん、一子剛一の今《い》
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