ありませぬ――併《し》かし其の為に貴嬢の御名をも汚がすが如き結果になりましては、何分我心の不安に堪へませぬので、――海軍々人は爾《しか》く婦人を侮辱するものと言はれては、是れ実に私一人の耻辱のみでは無いのでありますから、今晩は此の罪をも謹《つゝしん》で貴嬢の前に懺悔《ざんげ》し、赦《ゆる》したと云ふ一言の御言葉を得たいと思ふので御座いまする――」
瞑目《めいもく》せる梅子の心中には、今日しも上野公園にて、図《はか》らずも邂逅《かいこう》せる篠田の面影《おもかげ》明々《あり/\》と見ゆるなり、再昨年《さいさくねん》の春の夜始めて聴きたる彼の説教は、朗々と響くなり、彼を思うて人知れず絞れる生命《いのち》の涙、身も魂《たま》も捧げて彼を愛すと誓へる神前の祈祷《いのり》、嬉しき心、辛《つら》き思《おもひ》、千万無量の感慨は胸臆三寸の間に溢《あふ》れて、父なる神の御声《みこえ》、天に在《い》ます亡母《はゝ》の幻あり/\と見えつ、聞えつ、何故《など》斯《か》かる汚穢《けがれ》の筵《むしろ》に座して、狼《おほかみ》の甘き誘惑《いざなひ》に耳を仮《か》すやと叱かり給ふ、
松島は膝を正して手を拱《こ
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