さん、只だ一言|判然《はつきり》仰《おつ》しやつて下ださい」
 梅子はワナなく身を耐《こら》へて瞑目《めいもく》す、
 松島は一きは声ひそめつ、「梅子さん、今に至《いたつ》て考へて見れば、我ながら余りの愚蒙《ぐもう》と軽忽《けいこつ》とに呆《あき》れるばかりです、私は初め山木君――貴嬢《あなた》の父上の御承諾を得ました時、既に貴嬢の御承諾を得たるが如く心得、歓喜の余り、親友|知己等《ちきら》へも吹聴《ふいちやう》したのです、御笑ひ下ださるな、恋は大人《おとな》をも小児《こども》にする魔術です、――去れば今日《こんにち》、貴嬢から拒絶されたと云ふことが知れ渡つたものですから、同僚などから殆《ほとん》ど毎日の如く冷笑される、何時《いつ》結婚式を挙げるなど揶揄《からか》はれる其度《そのたび》に、私は穴にも入りたい様に感じまするので、寧《むし》ろ自殺して此の痛苦から逃れようかなど考へることもありまするが併《し》かし是《こ》れ一に私の罪なので、誰を怨《うら》むる筈《はず》も無く、親の権力が其子の意思を支配し得ると云ふ野蛮思想から、軽忽《けいこつ》に狂喜した我が愚《おろか》を慚愧《ざんき》する外は
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