を、お熊は早くも見とめて「梅ちやん、タマに来て下だすつたんだから、何卒|寛裕《ゆつくり》して下ださいナ、其れに御遠方なんだから、此の寒い夜中にお帰りなさるわけにはなりませんよ、最早《もう》、其の心算《つもり》にして置いたのですから、一泊《おとま》りなすつてネ――ねエ、お加女さん、可《い》いでせう」
「ハア、遅くなつたら泊りますからツて、申しては来ましたがネ」
「ぢや、大丈夫ですよ」と、早くもお熊は酒が言はする上機嫌《じやうきげん》「暫《しばら》く振りで梅ちやんの琴を聴かせて頂きませう――松島さん、梅ちやんは西洋のもお上手で在《いら》つしやいますがネ、お琴が又た一ときはで在つしやるんですよ」
「左様《さう》ですか、――是非拝聴致しませう」と松島は盃《ちやく》を片手に梅子に見とるゝばかり、
酒次第に廻りて、席|漸《やうや》く濫《みだ》る、
「旦那」と小声に下婢の呼ぶに、大洞は暫《し》ばしとばかり退《ま》かり出でぬ、
お熊の目くばせに、お加女も何やらん用事ありげに立ち去りぬ、
お熊は松島の側近く膝《ひざ》を進めて「ほんとにねエ、さうして御両人《おふたり》並んで在《いら》つしやると、如何
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