厚情に預《あづか》る、海軍の松島様で――御不礼《ごぶれい》無い様に御挨拶《ごあいさつ》を」
 偖《さて》はと梅子の胸|轟《とどろ》くを、松島は先《ま》づ口を開きつ「我輩が松島と云ふ無骨漢《ぶこつもの》です――御芳名は兼ねて承知致し居ります」
 去れど梅子は只《た》だ重ねて黙礼せるのみ、
 如才なき大洞は下婢が運べる盃《さかづき》取つて松島に差しつ「ぢや、貴所《あなたさま》からお始め下さい」
「梅子、お酌を」と、お加女は促《うな》がしつ、

     二十一の三

「御酌を」と促《うな》がされたる梅子は、俯《うつむ》きたるまま、微動《みゆるぎ》だにせず、
 再び促がされても、依然たり、
「何《どう》したんだねエ、此の女《こ》は」と、お加女《かめ》の耐《こら》へず声荒ららぐるを、お熊はオホヽと徳利《てうし》取り上げ、
「なにネ、若い方は兎角《とかく》耻づかしいもんですよ、まア其の間《うち》が人も花ですからねエ――松島さん、たまにほ、老婆《おばあ》さんのお酌もお珍らしくて可《よ》う御座んせう」
「老女《としより》の方が実は怖《こは》いのサ」と、松島の呵々大笑《かゝたいせう》して盃を挙ぐるを、
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