て下ださらぬもんですから、飛んだ失礼致したぢや御座んせんか」と、お加女はホヽと笑《ゑみ》傾け「あら、私《わたし》としたことが、御挨拶《ごあいさつ》も致しませんで――どうも旧年中は一方ならぬ御世話様に預りまして、何卒相変りませず」
「イヤ、左様《さう》固く出られると大《おほい》に閉口する――お互様ぢや」と、客は無頓着《むとんちやく》に打ち笑ひ「知らぬ方でもないので、御邪魔に来ました」
「さア、何卒《どうぞ》是れへ」とお加女が座をいざりて上座を譲らんとするを「ヤ、床の置物は御免《ごめん》蒙《かう》むらう」と、客は却《かへつ》て梅子の座側に近づかんとす、
お熊も興《きよう》がりて「其の方が可《よう》御座んす、どうせ、貴所《あなた》は家内《うち》の人も同様で在《いら》つしやるんですから」と言ふを「成程、其れが西洋式でがすかナ」と利八も笑ふ、
梅子の左側に客はドツかと座に就きぬ「令嬢失礼致します」
梅子は只《た》だ慇懃《いんぎん》に黙礼せるのみ、
「オヽ、梅子」とお加女は顧み「お前さんは未《ま》だお初《は》つに御目に懸《かゝ》るんでしたネ、此方《このかた》が阿父《おとつさん》の一方ならぬ御
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