たスタ/\と歩み去る、
「梅子、早くおしなネ」と言ひつゝ、お加女のチヨイと振り向く時、篠田の横顔、其目に入りしにぞ、「悪党ツ」と口の裡《うち》にツブやきつ、恍然《うつとり》立てる梅子を、思ふさまグイと睨《にら》み付けぬ、

     二十一の二

 都会の紅塵《こうぢん》を離れ、隅田の青流に枕《のぞ》める橋場の里、数寄《すき》を凝《こ》らせる大洞利八《おほほらりはち》が別荘の奥二階、春寒き河風を金屏《きんぺい》に遮《さへぎ》り、銀燭の華光|燦爛《さんらん》たる一室に、火炉を擁《よう》して端坐せるは、山木梅子の母子《おやこ》なりけり、
 珍客接待の役相勤むるは大洞の妻のお熊、黒く染めたる頭髪《かみ》を脂《あぶら》滴《したた》るばかりに結びつ「加女さん、今年のやうに寒《かん》じますと、老婆《としより》の難渋《なんじふ》ですよ、お互様にネ――梅子さんの時代が女性《をんな》の花と云ふもんですねエ――」
「でも姉さんは一寸《ちつと》も御変《おかはり》なさいませんがネ、私ツたら、カラ最早《もう》仕様《しやう》が無いんですよ、芳子などに始終《しよつちゆう》笑はれますの――何時の間に斯《か》う年取つた
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