れぬ、
 軽く首肯《うなづ》きたる梅子も、絹巾《ハンケチ》に眼を掩《おほ》ひぬ、

      *     *     *

 二輌の腕車《わんしや》は勇ましく走《は》せ去れり、

     二十一の一

 上野なる東照宮の境内を遠近《をちこち》話しながら歩を移す山木のお加女《かめ》と梅子、
「ネ、梅子、左様《さう》でせう、だから余ツ程考へなけりやなりませんよ、何時《いつ》までも花の盛《さかり》で居るわけにはならないからネ、お前さんなども、何《いづれ》かと言へば、最早《もう》見頃を過ぎた齢《とし》ですよ、まア、縹緻《きりやう》が可《い》いから一ツや二ツ隠《か》くしても居れようがネ――私にしてからが、只《た》だお前さんの行末を思へばこそ、斯《かう》してウルさく勧めるんだアね、悪く取られて、たまつたもんぢやありませんよ」
「阿母《おつか》さん、勿体《もつたい》ない、悪く取るなんてことあるものですか」
「けれど言ふことを聴いてお呉れでなきや、悪るく取つておいでとしか思はれませんよ」
 樹間隠《このまがく》れに見ゆる若き夫婦の盛装せるが、睦《むつ》ましげに語らひ行く影を、ツクヅクとお加女は見送
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