に思つてお呉れのお前の親切は、私、嬉しいとも恭《かたじけ》ないとも言葉には尽くされないの、けれど私、何も今日|死《しに》に行くと云ふぢやなし」
聊《いさゝ》か躊躇《ちうちよ》せる梅子は、思ひ返へしてホヽと打ち笑み「そりや、婆《ばあ》や、お前が日常《いつも》言ふ通り、老少不常なんだから、何時《いつ》如何《どんな》ことが起るまいとも知れないが、然《し》かし左様《さう》心配した日には、家《うち》の中にも居られなからうぢやないかネ、――多分遅くならうと思ふから婆や、何卒《どうぞ》先きに寝てお呉れよ、寒いからネ」
老婆は歔欷《きよき》して言語《ことば》なし、
開きかゝりてありし襖《ふすま》の間《あひ》より下女の丸き赭面《あからがほ》現はれて「お嬢様、奥様が玄関で御待ち兼ねで御座んす」
「オ、左様《さう》でせうネ」と急ぎ行かんとする梅子の袂に、老婆は縋《すが》りつ、「――お嬢様、――お慎深《つゝしみぶか》い貴嬢《あなたさま》へ、申すもクドいやうで御座いますが――何卒お気を着けなすつて下さいまし――御待ち申して居りますよ――」
仰ぎたる老婆の面《かほ》は、滲々《さん/\》たる涙の雨に濡《ぬ》
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