あた》りになりましても、貴嬢《あなたさま》ばかりには一目《いちもく》置いて居《いら》したのが、彼《あ》の晩の御剣幕たら何事で御座います、父子《おやこ》の縁も今夜限だと大きな声をなすつて、今にも貴嬢《あなた》を打擲《ちやうちやく》なさるかと、お側に居る私さへ身が慄《ふる》ひました――それに奥様の悪態を御覧遊ばせ、恩知らずの、人非人《にんぴにん》の、何《なん》の角《か》のと、兎《と》ても口にされる訳のものでは御座いませぬ、私でさへ彼《あ》の唇《くち》を引ツ裂いてあげたい程に思ひましたもの、貴嬢《あなたさま》能く御辛抱なされました――其れがマア、不審では御座いませぬか、一週間|経《た》つや経たずに、貴嬢をお連れなすつての宮寺《みやでら》詣《まゐ》り――貴嬢をお伴《つ》れ遊ばして奥様の御遊山《ごゆさん》は、私初めてお見受け申すので御座いますよ、是れはお嬢様、上野浅草は託《かこつけ》で、大洞様の御別荘が目的《めあて》に相違御座いません、今夜の橋場が、私、誠に心懸りで――何《どう》やら永い訣別《おわかれ》にでもなる様な気が致しまして――」
 梅子はジツと瞑目《めいもく》してありしが「婆や、其れ程迄
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