い》て注意する所なりしが、鍛工組合に放ても内々調査したりし結果、一昨夜を以て臨時総会を開き、彼に露探の嫌疑《けんぎ》充分なりとの故を以て審判委員五名を選定せり
[#ここで字下げ終わり]
「机の塵」「隣の噂」など云へる戯文欄に於て揶揄《やゆ》、冷評を加へしも少からず「基督教徒《キリストけうと》の非国家的思想」テフ大標題を掲げて、基督教は売国教なる所以《ゆゑん》を痛論せる仏教主義の新聞もあり、
二十
山木剛造の玄関には二輌の腕車《わんしや》、其の轅《ながえ》を揃《そろ》へて、主人《あるじ》を待ちつゝあり、
化粧室なる大玻璃鏡《すがたみ》の前には、今しも梅子の衣紋《えもん》正して立ち出でんとするを、其の後姿仰ぎてありし老婆の声|湿《うる》ませつ「では、お嬢様、何《どう》でも行《いら》つしやるので御座いますか――斯様《こんな》こと申したらば、老人《としより》の愚痴《ぐち》とお笑ひ遊ばすかも知れませぬが、何となく今日《こんにち》に限つて胸騒ぎが致しましてネ――」
梅子は玻璃鏡《かがみ》に映れる老婆の影をながめて微笑しつ「婆や、私だつて、今日此頃外へ出るなど少しも好みはしませ
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