ものである」
 松本は絶叫せり、拍手喝采《はくしゆかつさい》の響は百雷落下と凝はれぬ、
 今は議長も思ひ決《きは》めて起ち立がれり「議長に於きましては、此の重大問題を即決致しますることは、少こしく軽率《けいそつ》の様にも考へます、依《よつ》て五名の調査委員を挙げて、一応調査することに致し度存じます、御異議が無くば――」
 松本が周章《あわて》て起たんとする時賛成々々の声四隅に湧出《わきだ》して議長の意見を嘉納し了《おほ》せり、
「あゝ、大事去れり」と行徳は涙を揮《ふる》つて長大息《ちやうたいそく》せり、
 菱川は髪|逆立《さかだ》てて怒号せり「我が労働者|未《いま》だ自覚せず」

      *     *     *

 階下の一室に兀座《こつざ》せる篠田は、俄《にわか》に起る階上の拍手に沈思の眼《まなこ》を開きぬ、
 隙《すき》洩《も》る雪風に燈火明滅、

     十九
 
 正午には尚《な》ほ間《ま》のあり、
 同胞新聞の楼上なる、編輯室《へんしふしつ》の暖炉《ストウブ》の辺《ほとり》には、四五の記者の立ちて新聞を猟《あ》さるあり、椅子に凭《よ》りて手帳を翻《ひるが》へすあり、
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