篠田君が果して我々同志を売るものか如何《どう》か知れるではないか、――同君が賤業婦人を救ひ出すのは珍らしいことではない、加之《しかのみならず》諸君は之を称讃して麗《うる》はしき社会的救済事業と認めて来たでは無いか、又た四月の大会の為め、九州炭山坑夫の為め、経費募集のことの為めに苦心|焦慮《せうりよ》して居らるゝことは、諸君も御承知の筈《はず》では無いか――」
「彼が募集し得た金を握つて敵陣へ降参する魂胆に、注意して貰ひたい」と松本は遮《さへぎ》りぬ、
「君等は猜疑心《さいぎしん》の為めに自殺するのか」流石《さすが》に行徳も遂《つひ》に赫怒《かくど》せり、
頭を振りつゝ松本は躍《をど》り上つて叫ぶ「諸君は宜《よろ》しく自ら決断せねばならぬ、諸君は果して僕を信ずるか、信じないか」
「労働者諸君、諸君は共和民主々義を棄《す》てて擅制《せんせい》君主々義に従ふのか」と、手を振つて菱川は号叫《がうけう》す、
「勿論、我々労働者は社会主義の空論を排斥するのである、非戦論なんて云ふ書生論に捲《ま》き込まれるものとは違ふのである、我々|鍛工《かぢこう》の多数は現に鉄砲を造り軍艦を造つて飯を食つて居る
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